池尾和人『開発主義の暴走と保身』

 開発主義的金融(護送船団方式やメインバンク制や産業政策的金融やらそういったものの相互補完的システム)史観に基づく日本の「失敗」の物語だという。池尾氏の立論に関しては、すでに野口旭さんとの共著『構造改革論の誤解』(2001年)、『エコノミストミシュラン』(2003年)、『経済論戦の読み方』(2004年)などで繰り返し批判的検討を加えてきたのでここで再論はしませんが、高原氏の『不安型ナショナリズムの時代』などを読むと村上的開発主義史観というのはかなりコアな支持者がいるんだな、と思います。本書の対抗ワクチンは開発ずみでして、三輪先生とラムザイヤー先生の本、岩田先生の『日本経済を学ぶ』を読まれてからこの種の開発主義本を読まれるといでしょう。ただし本当にまずいのは、日本のアジア経済研究者のかなりの部分が開発主義パラダイムに「汚染」されていることじゃないですかね。