口が滑るか、手が滑るか?

 バーナンキ議長と福井総裁の世間的なイメージはこれかな。本日発売の『週刊東洋経済』(「インフレ圧力が招く株価底割れの脅威」)では、「バーナンキ・福井ショック」と表現されていますが、6月12日終値で株の下落率は、年初来高値から日本19%、米国7.3%、英国8.3%だそうです。

 同記事では日本の下落率がより激しい(実際にはこの後福井氏の村上Fショックが算入されれば現時点では20%超ですか)のは、やはり3月初の量的緩和解除とそれにともなう日銀当座預金残高の漸減が要因としてあげられています。
「急激な資金吸収が過剰流動性を崩すと同時に5月末のヘッジファンド決算も加わり、株式投資へ流れていた大量なリスクマネーを縮小させた、という」(同記事より)。

(小言;「リスクマネー」の意味が毎回わからないのですが、紙に刃物でもついてるんでしょうか?)

 たとえば長いデフレを経験した後に、まだ本格的な回復をするまえに、目前の景気がいいからデフレ対策やめちゃえ、と過去の大恐慌のときにFRBもこのような量的緩和解除に似た出口政策を採用しました。そのときのダウ平均の動きをみてみますと

1936 8月 119.200
1936 9  120.500
1936 10 126.600
1936 11 131.100
1936 12 130.000
1937 1 133.500
1937 2 136.700
1937 3 136.600
1937 4 128.100
1937 5 123.300
1937 6 119.600

となってまして(出所NBER)、出口政策をとったのが8月でちょうど半年後に株価はピークでした。その後は多少変化はありますが下落幅を拡大し、生産も低落してまたものや深い不況に至るということになっています。今回の日本は3月の解除から一月後に株価は現状ではピークでして、そこからいまの下げ転換になってますね。

 今後の株価動向を予測するなどとはできもしない相談ですが、ただ金融政策のスタンスをみるとやはり株価動向に注目しているものの、日銀の基本的スタンスはここ二ヶ月以内のゼロ金利解除であると依然わたしは考えています。

 ウォールストリートジャーナルや当ブログの邪推眼士さんも今回の福井問題が政治に貸しになり、ゼロ金利解除に影響を与える、正確にいうとゼロ金利解除は日銀の当初の予定よりも遅れる、という判断みたいですね。ところが、中央銀行汚職やスキャンダルを研究しているランブズドルフとシンケの研究によれば、公衆の中銀への注目が集まるので、むしろスキャンダルをおこすとよりインフレファイターの度合いが増す、ということだそうです。となると多くの観測とは異なり、ゼロ金利解除をやはり早期に実施する可能性も高いのではないか、という見方もなりたちます。
 
 いずれにせよ、注目すべきなのは、何日かまえに書きましたが、現在の日銀には中長期的な政策のフレームワークがやはりかけていて、そのために過度に日銀の政策担当者の発言に注目がいってまして、それがさらに今回の件で拍車がかかっているように思えるのは否定できないことだと思います。基本的に日銀は中長期的な政策フレームワーク(たとえばインタゲ)を提示して、あとは市場の情報にしたがっていくのがよろしいように思えますがいかがでしょうか?