「安倍政権はGDP統計をかさ上げした疑惑がある」という奇妙な妄想をもつ人たち

 感情優位な人たち(アベノセイダーズ版)のひとつの最近のトレンドがあって、「アベ政権は都合のいいように基準を改定してGDPかさ上げした!」とかいうもの。

 これほどでたらめはなくて、そもそも基準は国際的標準、そしてその改定を決めたのは民主党政権なんだけど 笑。
 より正確にいえば、この種の統計は政治的な思惑とは無縁に、麻生政権→民主党政権→安倍政権と粛々とすすめていただけ。

 国際的標準の意味は、今回の「かさ上げ」の主因。つまり国際連合で加盟国合意の下採択された国民経済計算の最新の国際基準である「2008SNA」(研究・開発の資本化等)に対応しただけ。

 それに移行することは、今も書いたが民主党政権のときに実行を決めただけ。統計の改定には五年ぐらいはかかる。

 2008SNA対応の経緯(内閣府

 本当に感情優位の根はたたず。

 基準値改定はいまも書いたが、民主党政権のときに実行を決めたこと。民主党政権にももちろん政治的思惑はない。それ以前の自公政権ももちろん安倍政権も。

 そして旧基準と新基準を比べてみると、民主党政権の魔の数年間も旧基準よりも“まとも”=底上げ、されてる(笑)。以下は質問者2さんがついでに上げてた図表。

 そして現政権にとって都合がいいのか悪いのかわからないが、消費増税の影響は新基準でも鮮明だ。

 安倍嫌いが高じると本当に陰謀脳が機動するいい見本である。

「アベノミクスはトリクルダウンを狙って一部の人にしか恩恵を与えない政策だ」と首相や浜田宏一先生を利用して嘘をつき続ける人たち

 アベノミクス、その中の金融緩和政策についての評価で、「アベノミクスはトリクルダウンを狙って一部の人にしか恩恵を与えない政策だ」というのが、繰り返し悪意、無知、そしてネットではここが多いがただの愉快犯という幼稚な心性で広まっている。正直、そこらへんのネットの愉快犯は無視して差し支えない。それに騙される人たちはググることさえもしないレベルなので、申し訳ないが自業自得である。

 ただもしこのブログに行きついた人がいれば、上記のような嘘に騙されないほうがいい。

 まずそもそも安倍首相自身がアベノミクスがトリクルダウンだということを否定している。以下は2015年の報道で、国会での発言から。動画もある。

 トリクルダウンでなく、経済の好循環目指す=安倍首相
https://jp.reuters.com/article/abe-economy-idJPKBN0L10CT20150128

 動画も

 さらに浜田宏一先生がアベノミクス初年度はトリクルダウンが生じたという発言を切り取って流布している悪質なツイートをしている人たちもいるが噴飯ものである。

 以下のエントリーでも書いたが、全体を底上げする政策なのでいろんな経路で好循環が発生する。その一部の評価で浜田先生はトリクルダウンが起きてるといったのだろう。いろんな方向から経済がよくなること、特に雇用についてはまさに下からよくなっている。

 このトリクルダウンについての我々リフレ派の共通理解は以下のエントリーにまとめた。

アベノミクスはトリクルダウンだ」説の間違い
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20170729#p1

 また最近では、僕は以下の動画でも解説している。動画の54分30秒から。無料なのでたまにはちゃんと動画ぐらいみたほうがいい。と書いても悪意と無理解の解消は無理なのがネット標準かな?

 正直、ネットの無理解や悪意などまったく関係なく、それに影響されることなく日銀が金融緩和を継続していれば、それで経済がよくなれば(悪意や嘘つきや幼稚な人たちが何を言おうが)大した問題ではない 笑。 

田中秀臣アベノミクス論 2017秋」
https://www.youtube.com/watch?v=7p5xWrvwApA

 例えば、トリクルダウンに厳しい態度をもつスティグリッツは、アベノミクスを支持している。アマルティア・センやトマ・ピケティらもだ。
 
まとめると、アベノミクスは経済を上からも下からも両方で改善し、それが消費増税の効果が顕著になる2014年1月までの高い経済成長をもたらしたといえるのである。そのため、トリクルダウン理論に手厳しいスティグリッツ氏ではあるが、アベノミクスの基本的な方向性には高い評価を与えている。

木下龍也&岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(ナナロク社)

 版元から頂戴しました。小説、漫画、そしてこのような歌集を頂戴できるのはとても光栄でうれしいです。この歌集はふたりの高校生にふたりの歌人が成り代わり、そして夏の七日間を歌ったものです。そこにまだ読んでませんが、小冊子で舞城王太郎氏のスピンオフ小説が付録で挿入されています。

 短歌とはいえ、事実上のストーリーともいえるものを持っている作品なので、ネタばれ的なことになるのでまずは読まれたほうがいいでしょう。目と頭が冴える一瞬を共有できる短歌集です。七日間の構成ですが、ひとつひとつの歌がそれ自身完結した物語性をもっていて、読むものの想像力を刺激します。匂いや感触といった五感の鋭敏さをとくに意識した作品が多く、「高校生」とはまず自分の体との距離が近いがゆえに悩む存在でもあったことを思い出します。

 素晴らしい作品ではないでしょうか。

玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ

玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ

能條純一他『昭和天皇物語』第一巻(小学館)そのほか

 kindle版で購入。最近は日本のマンガはkindle版か電子書籍で読んでる。しかしこの意表をついた題材とまた能條純一氏という人選。史実と虚構が巧みに重なって、とても面白い作品だ。その他に『空母いぶき』、『大奥』などを読んだ。『大奥』はいよいよ佳境。そして『空母いぶき』はいずもの改装が検討されているいまの状況を考えるとまさにリアルポリティクスものとしても読むべき作品に。