「景気回復の実感がない」に客観的根拠はあるのか?

 よくニュースなどでアベノミクス(というか事実上リフレ=金融緩和政策)の効果を否定したい勢力から、「景気の実感がない」という世論調査みたいなものが紹介されることがある。

 確かにさらに経済をよくする余地は多いにあるが、いまのリフレ政策の方向性を否定するためにこの種の世論調査を利用するならば、それは賛同できない。その種の「景気実感」を疑いと客観的な観点で検証すべきだろう。

 しばしば僕も言及しているが、講演会などで「景気の実感は?」という問いに、「一年で給料が倍」という返事をして会場にいた多くの人が真顔でうなずくという香ばしい光景を体験したこともある。

 それはそれとしてこの件について、日銀審議委員の原田泰さんが最近、客観的なデータに基づいてこの景気実感論を検証しているので引用してご紹介。

元のソースはここ http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko171130a.htm/

「政府は景気が良くなったと言っているが、国民には、生活向上の実感がない」と良く言われます。しかし、そもそも、生活向上の実感をどう捉えたら良いのでしょうか。世論調査は、その手掛かりになります。図4は、「お宅の生活は、去年の今頃と比べてどうでしょうか。」という質問の答えを示したものです。
図から、1年前と比べて、暮らし向きや生活が良くなった、向上したと答える人は極めて少ないと分かります。現在は5%余りですが、実質GDPが毎年10%で成長した高度成長期ですら、10%以上の人が良くなったと答えているのは1959〜63年にすぎません4。人間は、なかなか景気が良くなったと感じないものなのです。それでも、「向上している」から「低下している」を差し引いた指標を作ってみますと、景気動向をかなり正確かつ敏感に反映して動いているようです。2013年に上昇した後、消費税増税で低下し、その後、景気の着実な改善とともに上昇しています。