若田部昌澄「日本のケインズ主義に貨幣理論がないのはなぜか」in『リフレが日本経済を復活させる』

 昨日のトークイベントの席上で言及した、日本のケインズ主義とマルクス主義のドッキングした形態で、そのため貨幣理論が軽視されている思想的起源として、杉本栄一の『近代経済学の解明』(1950)を例示しました。

 この観点から杉本栄一もそうですが、その影響をうけた経済学者の多くが、インフレ・デフレを構造的な問題としてみなす傾向が強いことです。若田部さんの論説「日本のケインズ主義に貨幣理論がないのはなぜか」(『リフレが日本経済を復活させる』所収)はその点を欧米との比較をしながら詳細に論じています。

「対して日本では長い間、市場経済への信頼という軸が弱かった。すでに述べたように日本の経済論壇を支配したのは市場経済の失敗を強調するマルクス主義であり、経済への国家介入を自然かつ望ましいとみなす開発主義であった。日本のケインズ主義はマルクス主義、開発主義と親和性が高く、それが中央から左にまたがる大きなブロックを形成したといえる」(同書、277頁)。