リフレ政策を理解するための準備段階で読むべきマクロ経済学の教科書

 なんか長い題名だけど(笑)。ともかくマクロ経済学の教科書で自分の好みを以下に列挙。

 マクロ経済学の基本的なテキストとしては、個人的な好みとしては、ロバート・ゴードンの『現代マクロエコノミックス』上下巻がいい。労働市場で変化球(独自の見解)を投げてるので注意が必要だけどブランチャードの『マクロ経済学』上下も。両者は最新版の原書には日本のことが書いていて、そこでは日本の流動性の罠(ゼロ金利に直面している停滞状態)からの脱出法も説明されている。

 笹倉和幸氏の『標準マクロ経済学』が基本的な事項を詳細に説明していていい。ただし最先端の議論を教科書レベルで解説するには紙数の関係で上のゴードンやブランチャード、そのほか米国の教科書には譲るところがある(なのでリフレーション関係の説明はほぼないに等しい)。ただし大学生ならば2年生ぐらいまでにこの内容を確実に学んでおかないと先にすすむことは無理だろう。

 浅田統一郎さんの『マクロ経済学講義』の第二版も便利。これとケインズ学会の論集の浅田報告を合わせて読むとなおいい。さらに品切れだと思うだけど、松尾匡さんの『標準マクロ経済学』も面白い話題(二階堂副包の流動性の罠の議論とか懐かしい!)がいくつもあり便利。

 また翻訳では、これも僕はかなりお気に入りのウィリアムソンの『マクロ経済学』上下巻に、日本の流動性の罠からの脱却が簡潔に説明されている。「いずれにしても、貨幣を印刷して移転支払を通じて貨幣供給を増やせばトラップから脱出は可能である」。

 その他にもこれも最新のマクロ経済学の教科書だと思うが、ジョーンズの『マクロ経済学』短期編長期編もいい。そうえいばバローの『マクロ経済学』にも最近はインフレ目標の話がきっちり説明されていて面白い。

 もちろん教科書のレベルをあげれば、たとえば金融論の学部3年以上になると思うが、ウオルシュの金融論はかなりいい。確か岩田規久男先生も学習院の大学院で使用していた記憶がある。このテキストでは、流動性の罠の脱出が、new is-lmでの説明が掲載されているはず(最新の版は未確認なので)。これはクルーグマンモデルと基本含意は同じだけど。

 そうそう、古典的というか時代遅れかもしれないけどw 政策ラグなども含めてそこらへんのいまは誰も忘れた景気循環の渋い話なんかをアレンの『現代マクロ経済学』はいまだにいいよ。それと中谷巌氏の昔の『マクロ経済学入門』。いま出ている新版は魅力に乏しい。それとターノフスキーの病的なくらい詳細なISLMワールドを展開したマクロのテキストも面白い。その最新版は動学も充実していて読ませます。特に財政の維持可能性や開放経済系もこれでカバー可能。超上級者向き。

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現代マクロエコノミックス〈上〉

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現代マクロエコノミックス〈下〉

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Macroeconomics: Pearson New International Edition

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ブランシャール マクロ経済学〈上〉

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Blanchard:Macroeconomics, Global Edition

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標準マクロ経済学

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マクロ経済学基礎講義

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危機の中で〈ケインズ〉から学ぶ――資本主義とヴィジョンの再生を目指して

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ウィリアムソン マクロ経済学〈1〉

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ウィリアムソン マクロ経済学〈2〉応用篇

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ジョーンズ マクロ経済学 1 長期成長編

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ジョーンズマクロ経済学 2 短期変動編

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バロー マクロ経済学

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クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

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