経済学を楽しく学ぶには? 正月休み用読書&動画リスト

お正月休み用のブックガイドと動画をご紹介

経済学を専門にやっている学生でもなければ、順を追ってミクロ経済学マクロ経済学計量経済学をそれぞれ学ぶよりも僕は経済思想史を勧めたいです。なぜならたとえ経済学が身につかなくても(笑)、歴史、思想、政治、法律、文学、芸術、人間の伝記的知識、語学に数学など、教養を幅広く得ることができるからです。もちろん歴史的に物事をみれると、批判的精神もつきますよ。

以下では経済思想史だけではないんですが、最近出たもので、いま学生などにすすめている本を中心に以下にご紹介。

1 猪木武徳『経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み』

まず経済学を幅広い思想と歴史的文脈の中で再検討したこの新書は読みやすく問題意識を身に着けるのでいいと思います。僕もいままさに読んでますが、猪木先生の著作はすべて読んでほしいものばかりですね。

2 NHKスペシャル取材班『マネー資本主義』

2008年のリーマンショックを取材したNHKスペシャルの文庫化です。09年に放送されたものですが、いま読んでも当時の市場主義や経済学への批判的スタンスが濃厚な企画ですね。テレビのは出演者たちのコメントの部分が間延びして退屈だったのですが、書籍ではその点しまってます。ちなみに本書と同時に、学生たちにはアカデミー賞を受賞した『インサイド・ジョブ』と一緒に見ることをすすめています。『インサイド・ジョブ』はTUTAYAなどでレンタルできるはずです。

マネー資本主義―暴走から崩壊への真相 (新潮文庫)

マネー資本主義―暴走から崩壊への真相 (新潮文庫)

3 日本経済新聞社編『経済学 名著と現代』

日本経済新聞社はわりとハンディな経済学の歴史ものを何年かに一度、必ずしも経済思想史研究家とはいえない人たちに書かせていて、それが結構面白いのです。この本はその最新作ですね。特に竹森俊平氏ハイエク猪木武徳氏のトクヴィル、斉藤修氏のマルサス清家篤氏のベッカーが面白いですね。堂目卓生さんのアダム・スミスはこれよりも彼の一書『アダム・スミス』を熱烈におススメします。

経済学 名著と現代

経済学 名著と現代

4 現代の経済思想史研究の最先端の成果を「福祉」というキーワードからぎゅっと濃縮した教科書として、小峯敦編の『福祉の経済思想家たち』(増補改訂版)をすすめます。特にベンサム、バジョット、マーシャル、ピグーケインズベヴァリッジ、新厚生経済学、ミュルダール、ハイエクの章はおススメです。
 同じような経済思想史研究のプロが参集したもので、経済学史学会他編『古典から読み解く経済思想史』の栗田啓子、若田部昌澄、藤田菜々子の諸氏が書かれた項目は現代の経済政策とも関連させていて一読しておくといいでしょうね。

福祉の経済思想家たち

福祉の経済思想家たち

古典から読み解く経済思想史

古典から読み解く経済思想史

5 原典を何かというのであれば、マルサスの『人口論』とケインズの『一般理論』をおススメします。

人口論 (光文社古典新訳文庫)

人口論 (光文社古典新訳文庫)

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)

6 経済学史の通史はこの二冊でしょうね。最初の方が本格派です。後者は小ネタ含めて笑って読めますよ。

対話でわかる 痛快明解 経済学史

対話でわかる 痛快明解 経済学史

経済学とおともだちになろう

経済学とおともだちになろう

7 経済学を一気に短時間で学んだ気になりたければこの二冊がいいでしょう。

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講

8 そして動画です。いまの経済政策をこのお正月に学ぶには以下の動画を見ていくといいでしょう。
 1) http://www.youtube.com/watch?v=9rvPtfWgDUg(三分割されてますので、リンク先の横の動画一覧から探してください)
 2) http://www.nicovideo.jp/watch/sm19616956
 3) http://www.ustream.tv/recorded/27759655

さらに経済思想史塾をお忘れなく!

アダム・スミス編前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121025#p1

アダム・スミス編後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121031#p1

トマス・ロバート・マルサス編前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121107#p1

トマス・ロバート・マルサス編後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121113#p1

デイビッド・リカードを語る:前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121121#p1

デイビッド・リカードを語る:後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121128#p1

ジャン・バティスト・セー編前編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121205#p1

ジャン・バティスト・セー後編http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121212#p1

ジェレミーベンサム前編 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20121219#p1

ジェレミーベンサム後編 まもなく配信予定

国富論 1 (岩波文庫 白105-1)

国富論 1 (岩波文庫 白105-1)

経済学および課税の原理〈上巻〉 (岩波文庫)

経済学および課税の原理〈上巻〉 (岩波文庫)

経済学原理 上 (岩波文庫 白 107-2)

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世界の名著〈第38〉ベンサム,J.S.ミル (1967年)

世界の名著〈第38〉ベンサム,J.S.ミル (1967年)

田中秀臣「亡国の脱デフレ政策バッシング」『正論』2013年2月号

本日発売の『正論』2月号に寄稿しました。安倍新政権が採用すると公言している日本銀行と協調したデフレ脱却のための物価目標政策(インフレ目標政策)を拒む勢力を名指しで批判した論説です。同時収録の上念司さんの「1ドル90円台、株価1万2000円台回復…ニッポン経済復活のシナリオ」と対になってます。どうかご一読ください。