飯田泰之&荻上チキ:週刊チキーダ「宇宙世紀の経済学」

 連載も14回目という。14回もやるとさすがにネタが切れてきたのだろう。ガンダムネタを読んだ瞬間に思ったのがまずそのことである。この種のまじめとサブカルの間を架橋するテーマとしては最も安易に思いつく、その意味では禁断のテーマ(笑 でもあるだろう。

 実はこのブログの昔からの読者ならば知っているように、僕は「ガンダムの経済学」というテーマに関心を持っていた。ところでこのテーマはそもそも(稲葉振一郎が書いているように岡田靖さんが、『エコノミストミシュラン』の打ち上げのときに、当時まだ院生だった経済学者の鈴木久美氏を相手に、ガンダムの話と経済学の関連をしゃべっていたことに始まる。どちらかというと鈴木氏の方が岡田さんを上回る「博学」を示していた(笑

 そのときにその場所に稲葉さんがいたか記憶にないのだが、少なくとも僕はいた(笑)。で、この話を小耳にはさんだある出版社の編集者が、岡田さんに書かせようとしたが、確か謝絶。次にモリタク先生にも話がいったとかいかないとか。で、なぜか岡田・鈴木両氏の話を横でうんうんいいながら聞いてただけの(笑)、僕に来たわけだ。*1

 当初はこの企画はすぐに実現するかと思ったがそうは簡単にはいかなかった。冒頭にも書いたが、ネタとしては簡単に想像ができるのだが、そのネタと実現性には大きな谷間があった。経緯は面倒なので端折るが、通算8社くらいこの「ガンダムの経済学」に、ある者は本気で、ある者は若さゆえの性急さで企画を口にし、次から次へと僕の目の前から消えていった。簡単な理由は「ガンダム」という商標の大きさゆえである。またいくつかのケースでは、若い編集者の脳内レベルから年老いた上層部への架橋がうまくできないことにも障害があったようである。

 ところが去年、ついにこの企画がある大手出版社から出ることになった。ところが、僕はいろんな理由があるが、どうも気乗りせずに、その話を最終的に断った。

 (断った理由ではないが)ところで「ガンダムの経済学」は、ともかく書き手にフリーな(といっても僕がいままで10数冊書いてきた本と同様のレベルでの裁量権)立場で書かせてもらうことが必要条件である。「初歩的な…」という要求がつくだけでかなり萎えるのが正直なところだ。本格的に、といわれればうっきょー! といまでもやる気力がある。それだけこの「ガンダムの経済学」は本格的なものを要求するのである。ガンダムネタとしても経済学ネタとしても(笑。

 さて関係ない話を書いたが、このチキーダのガンダムネタは、僕も一度考えて、ずいぶん悩んだ「なぜジオン公国独立戦争をしたか」という大テーマである(笑)。この回答は本誌を読んでもらえればわかるが、著者たちの言葉では「資本主義」がその答えだそうだ。

 ところが面倒なのが、この「資本主義」ゆえに戦争、という視点は、少なくとも富野氏のガンダム世界の戦争観ではでてこない話だ。なぜなら彼は著作『戦争と平和』でも書いているが、まさに資本主義が大量虐殺的な戦争状態を回避させるものとして存在するからである*2

 さてチキーダ解釈は、「資本主義が一年戦争の原因」とまとめたが、直接には、地球ーコロニー間の債務・債権関係にあるようだ。初期コロニ―の建設に必要とした資金をファイナンスするために発行したコロニ―債を償却するために、貿易黒字を生み出すために消費を抑制し、借金返済のために苦しい生活を余儀なくされるという。その不満が爆発しての「一年戦争」だという。いうなれば資本主義の原理でコロニ―建設をしたことが「一年戦争」の遠因ということである。

 これはいわばケインズがかって『平和の経済的帰結』でドイツへの連合国の賠償金問題に関連して危惧した問題意識に通じるかもしれない(わからんけど 笑)。

 僕が考えたのは、「資本主義が原因」ではなく、まさに真逆の「社会主義が原因」というものだ。それが富野氏の問題意識もフォローする。そのシナリオは、(またしても 笑)「金本位的心性」と「清算主義」によるデフレが問題のスタートだ。例えば、チキーダもガンダム世界の設定で指摘したように各コロニ―はそれぞれの通貨を発行している。実際に物語でも両替をするシーンもあった。ところで重要なのが、『逆襲のシャア』のワンシーンである。

時間あったらここに続けて書く 笑

*1:岡田さんを上回り、隣でうんうんうなづいていただけのぼく 笑 を遥かに上回っていた鈴木氏がやればいいではないか、という意見が当然でてくるだろう。しかしその件もすでに5、6年前に解決ずみで、彼女の答えは飲み会だけの話題、とのごもっともな回答であったw ちなみに『ガンダム第二次世界大戦」を書いた鈴木ドイツ氏とは他人である。しかし「鈴木ドイツ」、この文脈で出すと意味深 謎

*2:あとチキーダの解釈は債務・債権関係の地球ーコロニ―間の想定などかならずしもガンダム世界の設定をもとにしてはおらず肝心部分が想像であるのもまずい ……まあ、いいけど、別に 笑

『ユーロマンガ』第四号

 御本頂戴しました。ありがとうございます。今回の号はちょっとエロチックとユーモア両面で迫っております。『スカイドール』は物語が進展しているのんだかなんだか相変わらずわかりませんが読めてしまいます 笑 さらに『ラパス』は物語もようやく折り返し。物語の核心に迫って行くので重要な章でしょう。『天空のビバンドム』は前回はなにがなんだか前の回を忘れてしまったのでそのままスル―してましたが、今回の号は悪魔の活躍で後半戦を読む気力がわいてくる回といえましょうか。『赤いベレー帽の女』はこれからどうなるのか、楽しみな展開ですね。主人公のヒロインの妹が話のキ―ですが、この妹の話は別な作品で展開されてますね。メビウスの『アンカル』のスピンオフは個人的にとても楽しめました。他のちょっとエッチなユーモア集は気楽に読める作品で、日本でも昔あったけどいまではすたれたものの流れですね。懐かしい。

ユーロマンガ4号

ユーロマンガ4号