メビウス『アルザック・ラプソディ』

 以前に見たことあるけれども、メビウス論を書いている諸事情から、この新版を購入。TVのシリーズで全部で14話からなる。冒頭と終わりのタイトルを抜かすと本編はほんの数分。全体でも40分ぐらいしかない。前みたときも大して面白いとは思わなかったが、今回はメビウスの作品をそれなりに消化してから見たので、別種の興味はひいた。つまり好事家か、もしくは暇人か、あるいは研究者か、この三者以外は見ない方が時間の無駄を回避できるだろう。しかし原作のブラックさがなくなり絵も新鮮味がない今となってはこのアニメはただ苦痛か自己満足のみ一般の鑑賞者に残るような気がするんだけど……推薦している大友克洋らの言葉がやたらむなしくなる。

あと特典映像もないし、なんらなの解説冊子みたいなおまけもない。こういうのは手抜きか安易な再発といわれてもしょうがないだろう。どうしても見たい人は、旧版をレンタルできるならばそれですませるべき。

(付記)あとメビウスのBDベースの衝撃の理由だった奥行きのある空間、飛翔感みたいなのはまったくこのアニメからは感じられず、むしろ切り絵的な平板な感じ。これもある種、驚くべき対照かも。

経済学が不況を一挙に解決する……バカかね

 よく思うけれども、ここでもうそろそろブログやめようかなあ、などと本音をぽつり吐くときにかぎってなんか意表をつくところから「元気」(?)をいただく 笑*1

 まだまだこの種の妄言とかねつ造があるかぎり、僕はブログやめられないの?? たすけて〜! 爆

*1:ハリセルを読んで気がついたんだけど、もちろんyanoさんのことではない

宮崎哲弥『映画365本』と実践的映画鑑賞

 DVD視聴による洋画評論の体裁をとりながらも、一冊読むと現代のアメリカ社会・文化を知ることができる実用的な一書。その実践的な評論スタイルは、宮崎さん独自のもので、今回も楽しく読めました。月に20本は最低でも見ておられるそうで、これはなかなかできないことだと思います。僕は月15本程度ですが、やはりDVD中心(あと幸運にもシネコンが近くにあるのでそれも併用)しかもポータブルプレイヤーで再生して、ちょっと空いた時間にみることにしています。宮崎さんの本の冒頭でもDVDの利点が、時間の効率的な利用の観点から述べられていて、本当にこれは同意できます。

 例えば、僕も昔、冬ソナの本を書いたという珍しい経験をしたことがあるのですが(笑)、そのときはともかく締切までの日数と見なくてはいけないドラマの絶対数を比較して、その残存時間をいかに有効に利用するかで、このポータブルDVDを使って、ちょっとした隙間の時間を最大限に活かして書いた経験があります。それとDVDですと字幕を選択できるので、特に英語のはいいですよね。英語字幕を選択しておけば、英語の勉強に確実になりますし。

 ちょっと余談ですみませんが、僕が愛用している機器は、On LifeのポータブルDVDでしてこれのいいところは海外のコードの異なるDVDも再生可能なことです。実際に韓国映画をよく見ていた時期では、香港版のVCD(画質・機能で劣るが英語字幕と廉価なので愛用した)などを気楽に再生できるたので助かりました。

 さて宮崎さんの本書における実践的スタイルはまた単なる「ためになる」という点に重きをおくだけではなく、同時に「面白い」ものではなければ意味を見出さないという姿勢も合わせもっています。

 面白くてためになる映画(主にハリウッド映画やハリウッド・スタイルの映画)が選ばれ、映画が与えてくれる蘊蓄力と教養力へのアップポイントという評価軸にそって論じられています。特に本書を読むことで(ある意味映画をみなくても)アメリカの社会・文化論を楽しんで学べる点が、時事評論を精力的にこなされている宮崎さんじゃないと不可能な映画評論になっていると思います。僕もすでに見ている映画が多かったのですが、見ているからこそ楽しめる点も多かったですね。

 本書の最後が『ウォール街』ですが、実は僕も最近の時事を背景に、この映画を再見したくなっていました。ゲッコーの“Greed is good”のくだりの演説をもう一回みてみたいと思うのです(あとで借りてこようかな? TSUTAYAで 笑)。続編できそうだし。

映画365本 DVDで世界を読む (朝日新書)

映画365本 DVDで世界を読む (朝日新書)

大澤聡「雑誌『経済往来』の履歴ー誌面構成と編集体制ー」

 頂戴した『メディア史研究』に収録されていました。中村宗悦さんと私の旧稿にもふれていただきました。経済雑誌研究は、事実上研究分野の一大欠落を成していて、なかなか研究が進展していない分野ではないかと思います。ただ何年か周期で経済雑誌研究の盛り上がりがあるのも事実でして、大澤さんのご研究もそうでしょうし、手前味噌ですが、占領期の経済記事・雑誌研究をしている私たちのプロジェクトもそのひとつになるかと思います。大澤さんの論文では、『経済往来』という経済雑誌が、『日本評論』という戦前の代表的な総合雑誌として変容していく過程を、編集サイドから実証的に分析することで、経済雑誌研究の分野でも(もちろん戦前の雑誌研究にも)欠けていた同誌の研究に手堅い貢献を行った、重要な分析だと思います。これからの基本文献のひとつになるかと思います。

 実は中村さんとの間で書いた経済雑誌『サラリーマン』についての単行本用の草稿が、もう10年近く手元にあるまま多事多忙で忘却されている状態です 笑。いずれどうにかしないといけないように思えるのですが…。

メディア史研究 第25号 小特集:歴史研究と図像・画像

メディア史研究 第25号 小特集:歴史研究と図像・画像

いかなくてよかった

 永山薫氏から電話でひと月ほど前にこのエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090417#p2をみてだと思うけれど、こののイベントhttp://www.mangaronsoh.com/archives/57488.htmlにこないかとお誘いをうけた。大学の講義があって時間的に無理なので断ったが、下の当日のルポをみると、真剣に論争自体を検証するんではなく、マンガ業界のインサイダーたちのただの演技披露だっただけで、僕が思うものとはまったく違い印象。

崩壊日記(出張所)
http://d.hatena.ne.jp/azumi_s/20090519

 なんか、ぬるいね。やはり論争本というよりも、事実上、論争の骨抜きというかどく抜きになってしまってないか? マンガ業界の縁辺のインサイダーだけでぬるくやりたいんなら論争本の体裁はいらないでしょう。簡単にいうと時間の無駄。昼間さんは勉強会の必要性をブログで書いてもいるけれどもそういう話題につながるようなものにも思えない。昼間さんのこの書き方もなんか「勉強会やる意義あるけどいろいろ問題もありましょうからごにょごにょ」と書いているように思える。

 資本主義社会だから(笑)、自作の本のイベントをやるのが悪いといっているわけではなく、こんななれあいばかりやっているから、僕のマンガ業界のインサイダーたちへの批判が、取材の別れ際に「お手柔らかに」と僕が一言!いっただけで、「腰がひけてるものだと思いました」爆 と解釈されて、経済学者批判だとか構造改革批判だとかマンガ業界以外への批判になって校正ゲラとしてでてくるようなことになっちゃうんじゃないのかな? まあ、ゲラで手直ししていまの形になったのは結果オーライですけどね。ただそのときから「ぬるさ」が鮮明に印象づけられ、本がでてその中味にも「ぬるさ」、さらにこういうイベントにも「ぬるさ」で、その「ぬるさ」の連続攻撃にちょっと僕は批判的になっているのはこれはだれがみてもわかることかと思いますが(たぶんいま取材申し込みされたらたぶん断った。論争本ではなく、あまりにタイトルと中味が違いすぎるから)。

あといちいちこの種のエントリーみて、その話題で永山さんは僕に電話やメールをいただくのはもうご勘弁を 笑。なんなら僕の方の研究会(え〜っとMHETは使えないし、なにがあったかな? 笑)で何かやるかもしれないからその機会があったときに、昼間さんとともに公にむけて話してくださいw

インフルエンザでそのうち宇宙へ

 ちょっと目薬を買いに近所のドラッグストアに行ったら、山積みでWHO推薦(文体うろ覚え)だかうたい文句があるアメリカ産の一枚500円以上もするマスクが売られてた。何人かのお客が手にしてたので僕も興味本位でみてみたが。

 しかしこれが花粉症の季節じゃなくて本当によかったよ。くしゃみがひどくなるときがあるので、マスクを買うこともあるんだけど、いまの日本の状況だとみんなマスク買占め?に走っているのでマスク買えないかもしれなかったなあ。

 <新型インフルエンザ>国内感染拡大 売れる安心感 マスク信奉根強く
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20090523ddm012040089000c.html

 まあ、そのうち日本人は宇宙服でも来て外歩いたりしてね。

 加藤哲郎先生が「パンデミック政治学」ということを書かれているのでご参考までに:http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml