日本銀行のリーク病再び?。そして利下げでの株価への効果ほぼ消失か?

 最近、講義の準備・講義自体・長距離通勤・家事w・そして切れ目のない取材とか依頼で今週はヘロヘロです。そんなわけで普段だと文字情報を追うんだけど、今日はテレビですましてるんですが画面をみて唖然。そうか、株価が上昇したのは与謝野発言とかもあるしもちろん(その与謝野発言の由来を別にしても)日本銀行側の情報もあるわけか。政策転換にかかわる重大情報が本当に漏れてくるのは早いね。

 ちなみにいまその日銀が利下げする、という情報をもとに株価が上昇したとしたら、実際に日銀が利下げをしても株価にはほとんど影響がなくなるでしょうね。ただ今回は日米欧の金利格差(為替レートの動向)が絡んでいるので、実際にどうなるかは不確定。ただ事前に情報が漏れないほうが*1、実際に利下げしたときの資産価格(株価、為替レートなど)の変化が急激なものになる可能性があるだけに非常に残念ですね。そういう期待効果を減殺するのが本当にわが国はうまい(もちろんこれは誉め言葉ではまったくない)。

 弾丸に制約があるんだから、いかに有効に使うかを考えなければいけないのに……。いったい何やってんだか。

(補)ちなみに実際には利下げがなかったりw、あるいは公定歩合引き下げなどの「クッション」をいれたりしてたらそのときはちょっと目もあてられない気がしますがw まあ、株価の予測は実際には神(見えざる手)のみ知る、ですが、単純な理論(ブランシャールの『マクロ経済学』とか読まれてはどうでしょうか)からは上に書いたようなことがいえるんですよねえ〜。しかし本当に「リーク」大好きだなあ。日本銀行のリーク問題については拙著『不謹慎な経済学』もしくはsvnseedsさんのところのカシャップの論説を読んでください。

*1:そもそもこれもへんな話でww、きまっているんならどこで決まってるんですが?w、あるいは政策委員間で事前の根回しがあるかもしれないだよね?w 中原さんの本を読むと異分子=中原さん、がいたときは事前の委員の接触を厳しくいましめてたようだし、それに日銀病という理事の面々の「検討」もかなりみられなかったようだけど、やはり日銀インサイダーばかりだとやりたい放題なんですかねえ?

利上げしないと年金生活者の生活が脅かされますか?

 すなふきんさんの日記から
 http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20081029

 以下、経済学でもな〜んでもない話として書く。

 さてもし預金の利子が上って年率1%ととしよう。貯金を100万円もっている人は1万円を得ることができる。1000万円の貯金の人は10万円、1億円の貯金の人が100万円だ。まあ、1億円ぐらいの貯金をもっていると預金の利子がゼロみたいなことになると「深刻」そうだね*1

 でもよ〜〜〜く、考えてみよう。この毎日新聞論説委員の発言はあたかも年金生活者の生活が脅かされるといっているよね。さあ、あなたはこの1億円も預貯金をもっている人たちの「生活を脅かさない」ために利上げを不況の中ですべきなのか、それとも失業や事業の不振を回避するために利下げをするべきか? こういうのは僕には常識の問題でしかないように思えるけれどもどうなんだろうか? 

 逆にもっと少額で預貯金が10万円(あるいは1万円)しかない人が年間1000円(あるいは100円)を失うのが嫌で、不況の中であえて利上げをして失業を増加させることを選ぶのだろうか? そういう要求があってももちろん不思議ではないし、この論説委員はその声なき?要求を代表していっているつもりなんだろう。

 でもこの議論ってどこかおかしいよね? 年金っていまの現役世代からの所得移転のはずだよね? 現役世代の生活を困窮させて、どうして年金生活者がらくになるんだろう? 年金制度がおかしくなってもいまの年金生活者が現役時代に蓄えている資産からの金利収入があがればそれでいいっておもってるわけなの? そもそもこの話っていまみたように年金とはどうも関係ないよね? せいぜい預金を多くもったり少なくもっている人の話でしかないよね? 年金生活者で考える必然性ってどこにあるんだろうね? 現役世代のときにちっとも蓄えができなかった人が、いまの現役世代からの所得移転をちゃんと受けられなくなっちゃうほうが本当の「年金生活者」の「生活の脅かし」を考える上でよりましな比喩じゃないかしら? 不思議だね、変だね、おかしいね。笑。(利上げのマクロ経済的な意味は枝野議員の利上げ発言についてのこのブログのエントリーを参照のこと)

 「不況の中で利上げを求める政治家やマスコミ。利下げに効果はないと中央銀行の独立性をおかしている経済閣僚とそれを見過ごすマスコミ」

 いや〜本当にすごいわ

*1:でもそれだけ資産がある人ならば金利の低い預金よりももっと別な資産運用をなんで考えないんだろうか? 仮にこの人が株や信託に投資したらいまの株価下落は相当な被害で、それに輪をかけそうな政府の「利上げ」はこの人の「生活を脅かす」ことになるんじゃないだろうか?

与謝野大臣の発言を考える

 ちょっと昨日はお昼休みにエントリーを書いた以外は講義と群馬から東京への帰宅とその後の長時間の取材(三時間)うけてたのでヘロヘロになってバタンキューろくに経済ニュースチェックしてません。svnseedさんのところが更新してあったので、馴れ合いコメント書きますがお元気でなによりです。そこで知ったのが「政策通」*1与謝野大臣の発言でした。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-34564720081028

 いろいろ突っ込み点があるんですが、もし日本銀行の独立性が「手段の独立性」を示すのであれば、コールレートの誘導目標を下げることが「効果がない」「国際協調を示す象徴的意味しかない」と政府の経済閣僚がいうことは日本銀行の独立性を明白に犯します。

 日本銀行は付き合いでコールレートを下げるというならばほかの国もつきあいで下げているというのがこの大臣の理解でしょう。効果のないものを金融政策として日本銀行が行うと評価して、日本銀行の政策に疑義をはさむことこそが、日本銀行の政策に対する信頼を損ねる行為だと思います。いったい先進各国の経済閣僚で「うちの中央銀行が利下げをしようとしているがそんなの効果ない」と明言する大臣がいるでしょうか? いたとしたらその発言自体が大問題でしょう。例えばポールソン財務長官が「FRBがどうも利下げを考えているようだがそんなの効果はないね」と発言したとしたらどうなりますか? 大騒動でしょう。中央銀行がこれから行うであろう政策判断を政府側が疑義を挟んでいるとしか理解されないでしょう。

 その一方で金利水準自体(0.25下げるのかとか0.5%下げるのとかそういう話ですよね)をどうこういうのは日銀の独立性を損ねるので発言は控える、といっていて、その複雑怪奇に捩れた日本銀行の独立性についてのこの大臣の理解は「本当に大丈夫?」なのかと真剣に思います。

 まあ、どのマスコミもこの与謝野大臣の明白な日本銀行の独立性への侵犯をスルーするんじゃないでしょうか(ロイターの記事しかいまは読む気力なくこれ書いたらまた少し眠りますが 笑)。むしろ与謝野大臣でさえも「国際協調の観点から」利下げを示唆している、という形で評価するんでしょうが、それって本当にただの政治分析や床屋政談レベルの話で、およそ経済問題を報道する姿勢とはいえないでしょう。

いったいこれってどうして日本でスルーされんでしょ?*2 

*1:日本では政策や経済・社会問題自体への理解の深さを示すのではなくあくまでも省庁の話をよく聞きシンパシーを抱くその感情的な深さの意味で官僚側が使い、それをマスコミがありがたく借用する称号と思われる

*2:まあ、それだけこの国ではなぜか日本銀行への評価が奇妙に歪んでいるということなんでしょうね