先進国の一段の利下げが予想されるなか置き去りにされる日本と日本銀行

 FRBも利下げ観測濃厚。50bpの利下げが予想される。これはJ.ハミルトンが指摘しているように、信用リスクの指標であるTEDスプレッドを低下させるのに貢献するであろう*1。ハミルトンは同時にドル資金の動向を懸念することがFRBの判断の不透明要素であると指摘しているが、彼が正しく論じているように、ECBも切り下げを行うとおもわれ、主要先進国は一段の利下げが予想される中ではFRBの利下げは必ず行わなければいけない決定であろう。

 ところで日本銀行は嶋中氏ら少数のエコノミストが早期の利下げを予想しているが、ほとんどのエコノミストと市場関係者はその動きがないことを認めるだろう。そうなることを読み込んで円高・株安が進行し、どこか日本経済には好ましくない水準で落ち着くのだろう。それは日本にとってこの上なく不幸なことである。日銀はただちに緊急利下げを行うべきである。日本だけが日本銀行の異常な政策(不況でも利上げ路線)に組織防衛(彼らの従来の政策の失敗を事実上認めることになる)のためにこだわりつづけているのは明白である。

 (余談というかここから床屋政談)なぜ日本銀行が利下げを行わないのか。まず現状の政策決定のメンバーに「異分子」がひとりもいないこと。ほぼすべての人が日銀と長年の関係になるインサイダーたちであり、自ら日本銀行の政策変更のリスクを犯す動機がないことがあげられるであろう。もちろん外部の経営者出身者もいるが、すでに金融政策のプロではないために取り込まれてしまっている。総裁、副総裁もすべて日銀出身者ということだけが理由となって選抜されている。また麻生首相ら政府側もいわばリチャード・クー理論のような中央銀行なき財政政策の信奉者である。政府側委員からの積極的な働きかけがないのかもしれない。

*1:日本のネットではこれを下げるのにアンナ・シュウオーツの発言を利用して資本市場を活用した清算主義を説く風説がいるが、それはまったく常軌を逸した発想である。

ワールドビジネスサテライトの感想:「円高・株安連鎖には日本銀行の金融緩和が一番」

 実はこの番組には基本的に失望しているので見ていないのですが、知人から原田泰さんが出たというので下のネットで見ました。これは面白い。特に最後の方の各エコノミスト氏の政府の経済政策についての評価(○×のパネルつき)が実に興味深い。

http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2008/10/n2-2.html

 コメントのところで、原田さんが「一時的に減税して将来増税といっているのですから将来の増税に備えて国民には今回の減税分をためておくべきというメッセージにうつりますよね。減税によって消費拡大する効果が非常に小さくなる」という趣旨のことをいっている点にはこのブログでも指摘しましたがまったく同意です。

 ですので、原田さんが後半のパネルのところで「国の支出(真水)」部分のところの回答は「−」に無回答になっているところの趣旨もよくわかります(財政政策の前提で効果に?なのに「真水」もなにもないですからね。質問自体がナンセンスなんでしょう)。埋蔵金の活用には賛成なのも理解できます。なぜならこれもこのブログでも紹介しましたが、埋蔵金の活用は「いま10万減税して明日10万とる」という話に入らない財政政策のあり方だからです。ほかの諸項目に全部×なのも原田さんらしいですね。これも財政政策の現在の政府の策定のあり方が「いま10万減税して明日10万とる」というものですから個々のバラマキ方も本来は「−」かもしれませんが、そういうバラマキもあまりにも恣意的であることからもむしろ積極的に×なんでしょう。まあ、推測ですが、そんなに違わないでしょうね。

 また「世界中が金融緩和して日本だけが金融緩和しなければ円高になってしまう。それを避けるために世界にあわせて金融緩和をすべき」という趣旨のこともいわれています。これもこのブログでもう書いてる僕も嫌になるほど最近書いていることです。嶋中雄二氏が「いますぐにでもコールレートを0.25%下げるべき」とおっしゃっていましたが無論そうですが、問題は政策転換をはっきりと明記して(かの速水総裁時のように金融緩和しながらもその目的があやふやかつ効果にさえも疑問を総裁自身が提起するなどはやめていただきたいです)より積極的な金融緩和の姿勢をみせるべきです。

 原田さんのパネル上のモットー「金融緩和なき財政政策に効果なし」にはとても同意。もちろんまったくない、というわけではないが、90年代の経験を思い出してほしい。

 しかしとりあえず番組のコメントでは多くのエコノミスト円高を防ぐために日銀の金融緩和を主張しているとの紹介コメントはいい、と思う。WBS見直した 笑。これで少しはプレッシャーになるはず。というかそれしか円高・株安とまらんけども(現象的にはどこかで落ち着くけどももちろんwそれが日本にどういう意味をもつ「底値」「天井」なのかよく考えるべきでしょう)。

 嶋中雄二氏がこのレポートで、過去の日銀のタイミングから12月利下げを予測している。つまり日銀の政策はかの組織がいっていたフォワードルッキングな金融政策ではなく、バックワードルッキングに再構成できるのだが(苦笑)、それでも12月は遅すぎる(もちろん公定歩合下げなど挟む必要なし)。いますぐにでも緊急利下げすべき。今すぐ。

(補)切込隊長のエントリーも興味深いので参照のこと:http://kirik.tea-nifty.com/diary/2008/10/post-625a.html#more