日銀、ドル資金供給オペ

ロイター記事より

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-33827520080918

「一方、ドル供給オペのためには中央銀行間でのスワップにより為替リスクを回避した上で日銀はドルを調達し、それを原資に供給オペを行う。つまりドル資金供給オペと一対となっている。円の資金市場に影響を与えるオペレーションということで本日の決定会合で決定した」

 深刻な流動性の不足の前にはこのような多国間の流動性供給は好ましい判断だと思います。金融危機対応*1としてはタイミングも即断ではないでしょうか。ただこの流動性の不足が9月中で終わるかというと微妙かもしれないですね(基本的に予見不可能だと思うのです)。もし日銀が現状の国際協調スキームを採用することが長びくようですと、短期名目金利のささやかなプラスをやがてゼロ近傍に下げる決断を日銀は迫られる可能性がでてくるではないでしょうか?

 もちろん現状の協調を9月以降は採用しない、という選択肢もあるでしょう。しかしそうなると今回の資金供給は何だったのか? ということにもなりかねないですね。竹森=シン流に「流動性」というのが単なる投資意欲の別名だとすれば、流動性危機がいつ終息するのか(あるいは拡大してしまうのか)は、まさにナイト的な不確実性の世界に思えますね。日銀はどちらにせよ思い切った手札を切りましたね。まさに他人事ではなくなってきた(金融危機を契機にした流動性の罠の復活か否かのね)。だからあれだけリフレしとけと何万回。

*1:ここ注意! リフレとか基本的に関係なし

高橋洋一『霞が関をぶっ壊せ!』

 今日は久しぶりに群馬に行ってきました。献本多くいただいておりました。高橋さんから献本いただきました。ありがとうございます。今日の雇用・能力開発機構廃止なども含めて公務員制度改革はぜひ必要でしょう。リフレ政策とは別に行うべきものだと理解しています。しかし本当に話題が豊富ですね。

 

霞が関をぶっ壊せ!

霞が関をぶっ壊せ!

内藤陽介『大統領になりそこなった男たち』

 内藤さんから献本いただきました。どうもありがとうございます。

 内藤さんご本人のブログの紹介http://yosukenaito.blog40.fc2.com/blog-entry-1220.htmlにありますように本書は、「200年以上にも及ぶ米国大統領選挙の歴史において、志半ばに斃れた男たち」という斬新な視点から切手になった8人を選び出しアメリカ国家の政治・社会史を鮮やかに描いたものになっています。『反米の世界史』と一緒に読まれればさらに理解が深まると思いますのでぜひ講談社さんは重版をお願いできればと思います(最近、反米主義ブームでもありますし)。内藤さんの本を読んでいくと現代中心の世界史・日本史に関するバランスのとれた理解が得ることができ、まさに教養のための読書が可能になります。

大統領になりそこなった男たち (中公新書ラクレ)

大統領になりそこなった男たち (中公新書ラクレ)

トラスト立木『この国の経済常識はウソばかり』

 担当の依田さんから献本いただきました。ありがとうございます。著者は「もっとも出世しない経済記者」に選ばれた過去があるという異端?の記者さんですね。さすがにまだ今日は読む時間がないので後刻拝読したいと思います。考えてみれば今日献本をいただいた人たちはみな異能・異端の人ばかりです(この言葉の組合せは僕にとつては羨望の表現です)。僕も異能はないにしても異端であることは間違いのないところなのでそれにふさわしい活動をしたいな、と今日頂いた御本を読みながら思う次第です。

この国の経済常識はウソばかり (新書y)

この国の経済常識はウソばかり (新書y)

雇用・能力開発機構廃止の問題点

 官邸の有識者会議が機構の廃止・解体を提示した。この廃止の方向をまず支持したい。同機構を廃止する理由については、拙著『日本型サラリーマンは復活する』であげたのでここでは触れないが簡単にいえば民間で完全にできるものをやる必要もなく、また独自の施策もコストが大きいだけで実効性にきわめて乏しいからだ(「私のしごと館」はその象徴にすぎない)。

 だが、廃止がたとえ基本方針であっても喜んでばかりはいられない。なぜなら廃止とはこの組織がこの世界からなくなることを意味してはいないからだ。「解体」というのは再膨張のきっかけにすらなるかもしれず根気よくみていかなくてはいけない。

 今回の廃止・解体提案に感じた問題点を書きたい。この種の問題はネットだと若林亜紀さんのところが詳しいだろう。まだ何も書いてないようだが(http://wakabayashi.way-nifty.com/)期待したい。

 日経によるとこの案で僕が一番注意しているのは、「職業能力開発総合大学校」である。これを案では廃止か学校法人化して民営化とある。廃止は結構なのだが、この学校法人化はくせものである。厚労省の「領土」としてあたかも同省の一部局として活用される可能性があるだろう。例えば人事上の配置のパイプとしの利用である。

 例えば政策研究大学院大学や(このブログで存続を問題視している)労働政策研究・研修機構などが厚労省の事実上の「人事の領土」であることは明白である。かって池田氏http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuoに批判されたとある人物がかってどこにい、そしてどこを中継(本省)を経て、そしていまどこにいるのかをみれば、それらの組織に対する厚労省の影響力は一目瞭然である。僕は最近たまたまはてなのリンクにその人物のコメント欄で、こっそりとしたリフレ批判(これ自体はどうでもいい、騒ぐだけ騒げばいいだろう)が書かれていることに気がつき、その人物がそもそもの大学にいないことにようやく気がついた。その人物がこっそりと?騒がなければこの厚労省の「領土」問題に僕はまったく気が付きもしなかっただろう。

 そして中途半端な学校法人化はこのケースからも「職業能力開発総合大学校」をあたかも「研究は大事」「文化は大事」「教育は大事」などという美辞麗句だけで存続せしめ、ただの厚労省役人のまさに「天下り」先あるいは給与のはけ口としてだけ機能させてしまうだろう。そんなバカなことが許容されないように完全廃止を求めたい。

竹森俊平『資本主義は嫌いですか』(第三部だけ読了)&備忘録

 日本で最も最先端のバブルの経済学の入門書。いままでバブルの経済学の啓蒙書といえば野口悠紀雄氏の『バブルの経済学』が有名だったが、これで完全に過去のものとなった。しかしなんかH.ミンスキーの亡霊が復活した感じだよなあ(ポスト・ケインジアンしかわからんか 笑)。この本の第三部に掲載されている諸論文や今年のジャクソンホールでの報告論文とか読んでないと政策論議の点でこれから遅れるかもしれない*1小島寛之さんや松尾匡さん相手に交歓してる暇ないね笑) 実はまだ第三部しかこの竹森さんの本は読んでないので残りはこれから。以下は竹森さんの本で紹介されてた論文(最初の)と、竹森本以降に報告されたより新しいもの(あとの二本)

Markus K. Brunnermeier:Deciphering the 2007-08 Liquidity and Credit Crunch
http://www.princeton.edu/~markus/research/papers/liquidity_crunch_2007_08.pdf

HYUN SONG SHIN:Financial Intermediaries, Financial Stability and Monetary Policy
http://www.kc.frb.org/publicat/sympos/2008/Shin.09.07.08.pdf
このコメントも便利http://www.imf.org/external/np/speeches/2008/082208.htm#ch1
ちなみにYen Carry Trade and the Subprime Crisis (with Masazumi Hattori)とかもありなぜか微苦笑(その意味は論文を読めばわかる)。

FRANKLIN ALLEN&ELENA CARLETTI :The Role of Liquidity in Financial Crises
http://www.kc.frb.org/publicat/sympos/2008/AllenandCarletti.09.14.08.pdf
アレンはゲールとの共著のテキストが定評ある人。

とりあえずあとで読む。

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

*1:といいながら心の底ではIS-LM上等、AD-ASで実践的にほぼ無問題と思っていたりするけれども 笑