蒲焼の匂い:『日経公社債情報』


 久しぶりに最強の業界紙のネタでございます。末吉さん名義の日銀ウォッチ「上げ潮政策、“逆流”の始まり?」(2月12日号)は、安倍政権の上げ潮政策は、よくマスコミその他で目にする“反構造改革”とか改革のやる気がないのではなく、むしろりそな銀行への公的資金注入という(非効率性の延命w)によって株価が反転し、財政規模はほぼ一定での大規模為替介入によるデフレ脱却を目指したのが小泉後期政権の実態だった、と見解を書かれています*1


 したがって小泉後期政権が表向きは構造改革といいながら実態としての上げ潮スタンスを安倍政経は口に出している正直者w政権と云うことだと思います。しかし消費税増税格差是正を口実にさまざまな既得権益の構築を狙う勢力が、この“反構造改革”を安倍政権にレッテル張りすることで、上げ潮の逆流がくるかもしれない、というのが末吉さんの論旨でしょう。


 ちなみにこれだけだと安倍ー中川政権へのエールで終わって思わず暗黒苦笑がでるので、解毒剤としてBUNTENさんのところhttp://d.hatena.ne.jp/BUNTEN/20070218や、また小泉後期政権も安倍政権もまさにリフレ政策は蒲焼の匂いの側面が強いことを想起すべきでしょう。なぜ蒲焼の匂いにいまだなっつているかというと竹中平蔵氏の敷設した罠にはまっているからです。それは中川ー高橋氏らがたびたび実質経済成長率=潜在経済成長率の論争を日銀にしかけようとしていることにからんできます。いまの政府の潜在成長率の見込みは実は日銀と同様に非常に低水準です。したがってデフレギャップも(現状の中川ー高橋路線に比しても)過少評価されてしまっています。この元凶は竹中氏が大臣だったときの『経済財政白書』の推計とそれに基づく以後の経済財政諮問会議の一連の提言に求めることができます。つまり中川氏の与党と政府の間にはいまや政策の前提にかなりの温度差があるといってもよく、それが曖昧なのは政治的な理由によるのでしょうが(政権の政策の見直しに直結する)、しかしこれを曖昧なままにしているためにこの罠にはまったまま、小泉後期政権も安倍政権の上げ潮政策も実態はなあなあの受動的マクロ政策という政策以前のものになっているといっていいでしょう。簡単にいうとリフレに関しては事実上なにもしていないで口先だけなわけです。むしろ財政に面では小泉後期よりも緊縮的に推移する分不安定性が増す可能性もあるでしょうね。この「竹中元大臣の罠」がもっと問題視されるべきです。

*1:拙著『経済政策を歴史に学ぶ』でも同様のことを書きましたのでご参照ください。もちろん私は末吉さんではないですよw