地味だけどおススメ経済本


 年末の経済書・経営書ベストのお祭りからはたぶん無視されるだろうけれども(主義主張を超えて)これは外せない経済書をとりあえず書いておきたいと思います。専門性が高いのはご容赦ください。

まずはこれは外せません。

『デフレ下の賃金変動―名目賃金の下方硬直性と金融政策』
黒田祥子, 山本勲 東京大学出版会


デフレ下の賃金変動―名目賃金の下方硬直性と金融政策

デフレ下の賃金変動―名目賃金の下方硬直性と金融政策

 ネット上ではほとんど評価をききませんが、これは必読の文献でしょう。

続いて野尻武敏氏の『転換期の政治経済倫理序説―経済社会と自然法』(ミネルヴァ書房 )。この本の核心部分はトマス・アクィナスをめぐっての論述でしょう。多少時論的にもっていけば金利規制をめぐる論争の深層にもつながるところでしょう。野尻氏のトマス・アクィナス論は日本の学説研究の中では、福田徳三、上田辰之助五百旗頭真治郎らの研究と比較対象することでも輝きを増すことでしょう。


 年末皆さんのおかげですスペシャルⅠ


早読み『週刊東洋経済』。いわゆるリフレ派およびそのネット中心の知友の面々がかなりランクイン。

第3位『ヤバい経済学』


第5位『日銀はだれのものか』


第9位『脱デフレの歴史分析』


第12位『「小さな政府」を問いなおす』


第21位『ダメな議論』


第30位『世界デフレは三度来る』


第49位『ベン・バーナンキ


第49位『誘惑される意志』


第77位『統計数字を疑う』


第77位『経済政策を歴史に学ぶ』


第77位『BRICs富裕層』


詳細はもちろん有意義なコメントやインタビューふんだんの同誌をご参照ください。投票者数が多くなり77位でも得点によりますが数名いれてもぎりぎりランクインですね。この意味で前回にくらべると格段にバランスがよくなっている印象。
で、田中は何を選んだのか。コメントフルバージョン(同誌掲載のものと異なります)とともにご案内。

【第1位】
●書名
『脱デフレの歴史分析』(藤原書店)
コメント 近代以降の日本の経済を政策レジームの推移から分析したするどい論考。日本がここ10数年直面した経済的停滞の評価とその処方箋も歴史的見地からクリアに提示している。思想的事件ともいえる本年度の一大成果。

【第2位】
●書名
『誘惑される意志』(NTT出版
コメント 経済学がゴミ箱に捨てていた意志力や後悔といった感情と人間性をきちんとした実証のもとに復権した、まさに経済学の転換の書。

【第3位】
●書名
『上げ潮の時代』(講談社
コメント 本書中のたった数ページの記述だが、政権の中核に位置する人物が歴史上はじめて力強く、デフレ経済からの脱却を金融政策主導の成長戦略に置いていることを発言したことを記念してランクイン。