社会保険庁不祥事


 昨年の暗黒卿(旧ブログの任意の箇所参照)とのやりとり以来、いわゆる「改革が構造化」しているような問題には敬して遠ざかっていましたが、つい一昨日、知人から社会保険庁不祥事についてどう思うのか? と聞かれたこともあり少しこの問題を考えてみました。私、基本的にこーぞ問題は毎回胡散臭く接しているわけです。この知人からの問いもちょっとそのときソファでウトウト(ーー;)していた関係でボケてまして「ああ、あの慶応のなんといったか、その人がなにか書いてるかもね」と非常に大雑把な受け答えをしてしまいました。慶応の先生って誰? 名前も出てこないのに信用できるの? とその方は思われたでしょう。すみません。


権丈善一先生でした。実は上記の電話のときには確認してなかったのですが、やはりこの問題をきちんと書かれていることで、あらためてさすが、と納得しました。


 年金問題も含めてこーぞ問題の特徴はその政策手法が自己目的化すること(郵貯民営化)、何のためにやるのか目的と手段のミスマッチ(郵貯民営化、道路公団民営化)という特徴をそなえるとともに、官僚パッシングという格好の標的にマスコミも政治家も評論家もそれぞれが期待利益をみいだしやすいことがあげられるでしょう。簡単にいうと社会保険庁の不祥事もその問題の所在が特定化せず、問題が刷りかえられ、ままオーバーな処方箋が提起される可能性があるのではないでしょうか。


 昨日、久しぶりに覗いた山崎元さんの社会保険庁解体=官僚リストラ論はその典型かもしれないですね。

 
http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/44f98644c3600b18561b99005161e769


 私が権丈先生の年金問題の諸論説をbewaadさんたちに薦めるhttp://bewaad.com/20060429.html#p02理由のひとつは、なにが問題でなにが処方箋かをきちんと規定してくれるからです。


 今回の騒動についてもいたって簡明です。詳しくはリンク先の権丈さんの論説をお読みいただければ明確なのですが、引用すれば



 「国民年金保険料の不正免除報道をきっかけとして、わたしが制度改革を期待することは、実にシンプル。今回のように、所定の要件を満たす低所得者に代って、社会保険事務所が、本人への連絡を経て同意を得た後に免除申請を代行してあげても、法に触れないように国民年金法を改正することである」。


 非常に参考になりました。


以下が権丈先生の論説:勿凝学問44「大いに期待したい“民主党の年金偽装追及チーム”への参考資料をひとつ」


 http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare44.pdf

ところでこの論説の注にでてきた「社会保険事務所労働組合改革」という話を少し知りたい。

 エードリアン・トミーネ『SLEEPWALK』


 梶ピエールさんがカリフォルニアの書店で見つけて教えてくれた『オプティック・ナーヴ(視覚神経)』シリーズの最初の単行本の邦訳。アマゾンでは入手できなかったのでhttp://www.presspop.com/shop/adrian_tomine/at_001.htmlで直接購入。


 ITOKさんによると辰巳ヨシヒロの影響をトミーネは受けているとのことだけれどもこの作品をみたかぎりではよくわからない。いくつか関係資料もあるのであとでちょっとみてみるかな。


 作品の感想としてはイラストやこの本の表紙からうける印象を大きく裏切る。簡単にいうと「性格の悪い人間、或いはささいな悪意の日常図鑑」とでもいうべきもの。こういうととりとめがないのだが、ほぼすべてのストーリでカタルシスとは無縁な、むしろトミーネの絵が描写している人物のニキビ、吹き出物を淡々とみせられている感じ。こう書くと本当になんなんだあ、という感じだが、僕はそんなに嫌いじゃない。もしこの作品集の中で唯一つ「救い」(僕はなくてもよかったが正直ほっとした 笑)があるエピソードは、SIX DAY COLD。風邪をこじらせた男とそれを看病する女の話。このエピソードも含めて全編を寂寥感が漂う。下の画像は本邦訳に収録されてるカップル覗きもの? ECHO AVENUEのもの。


Echo Avenue

 大竹文雄・森永卓郎論争メモ書き

 旧ブログのメモをより原稿ぽく書き直したもの。

 「格差社会」の中心ともいえる若年層の所得格差拡大は、長期不況が原因だということで経済学者の意見がおおよそ一致している。だが格差社会論者の間には微妙な温度差がある。例えば大竹文雄大阪大学教授は長期不況が所得格差の悪化をもたらしたが、労働市場の構造問題がさらにこの不況の深化に決定的な役割をもっていると考えている。既得権者(既存正社員)の力が不況の下でより強まり(=リストラに抵抗する)、そのため交渉力が相対的に弱い新卒採用者の減少を生み出してしまったというわけだ。採用されなかった多くの若者はアルバイトやパートとして生活していかざるをえない。そのため大竹氏は既存正社員の既得権を削減することを主張している。

 大竹氏はタクシー業者を例に次のようにも述べている。

規制緩和がなかった場合、既存の運転手の所得は低下しなかったかもしれないが、不況で会社をリストラされた中高年がタクシー運転手として再就職することもできず、失業者になったか、より低い賃金の仕事に就いたはずだ。つまり、規制緩和がなければ所得格差はさらに大きくなっていた可能性が高い」(大竹文雄「『格差はいけない』の不毛『論座』4月号)

 森永卓郎獨協大学教授はこの大竹氏の議論を批判した(「金融資産への課税強化を」『世界』5月号)。森永氏の批判の要点は、少しくだけた調子で書けば、「不況の中で、規制緩和で失業が減少し、またタクシー業者より賃金の低い職業に就かないですむようになるなんて考えるのは難しい。タクシー業者の例でいうと、失業しないよりも働くことを選ぶ選択肢の中で最も待遇の悪い選択肢であることだってあるし、僕の見聞したところその可能性の方がよほど大きいんだよ」という趣旨だろう。私もまた森永氏と同様に格差拡大の原因が不況ならば正しい不況対策でこの問題に対処すべきだと思う。

 長期不況を解くキーはデフレが将来も続くと考える人々の期待にある。日本の長期停滞の特徴であるデフレとゼロ金利の状況を考えてみよう。例えば目にする名目利子率はゼロであっても、デフレが数%続くと予想すればそれだけ実質利子率は高くなり景気を悪くする。日本の不況がこれほど長く続いたのはこの人々のデフレ期待が容易に払拭できなかったからである(流動性の罠への直面)。そしてこの金融面の不調整が、労働市場の賃金の下方硬直性と衝突すること(既存正社員の交渉力を高めて新卒採用を制限すること)で失業を高めてしまった、というのが大まかな長期不況のシナリオである。

 以上から大竹氏の主張するような労働市場規制緩和を行っても不況対策としては的外れになる。なぜなら既得権者の既得権を緩和してもそのこと自体が不況対策としてデフレ期待を解消し、所得格差の改善に貢献することはないからである。所得格差の拡大は市場の責任ではなく、金融政策の失敗の産物なのである。

「青島は断じて領有すべからず」『全集1』大正3年11月15日号

「この問題に対する吾輩の立場は明白なり。アジア大陸に領土を拡張すべからず。満州も宜しく早きにおよんでこれを放棄すべし、とはこれ吾輩の宿論なり。更に新たに支那山東省の一角に領土を獲得する如きは、害悪に害悪を重ね、危険に危険を加えるもの、断じて反対せざるを得ざるところなり 略 我が国人をして言はしむれば、我が国が満州に拠り、山東に拠ることは、国際的に、内乱的に、支那に一朝事ある場合には我が有力なる陸海軍を迅速に、有効に、はたらかして、速やかに平和の回復を得しめ、はたまは禍乱を未発に防止する所以なりと、説かんも、支那国民自身、および支那大利害を有する欧米諸国の立場より見れば、これ程、危険にして恐るべき状態はあるべからず」。

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