Comic Nose

『サブリナ』ニック ドルナソ (著),藤井 光 (翻訳)早川書房

不気味な作品である。表層的には現代のさまざまな病理的現象が組み込まれている。ネット社会の病理的な側面、マスコミの病理、新興宗教的なものの病理、職場での薄っぺらいつながりと手のひら返しの疎外、身勝手な愛情の病理、殺伐とした郊外と室内の光景、…

『フリースタイル』37号:THE BEST MANGA 2018このマンガを読め!他

買いそびれていた『フリースタイル』を購入。数か月前にマスダさん関係のパワポを掲示してから、再びマンガやアニメ研究の意欲が沸いてきた。まあ、アイドル経済の研究は労働経済やこのマスダさん関係のそもそも派生だったのが、いつの間にか大きな柱になっ…

『冒険エレキテ島』2巻、『フイチン再見!』全巻、『人間失格』第一巻、『西村ツチカ短編集アイスバーン』、『セカイ、WORLD、世界』

最近読んだマンガをまとめて。『冒険エレキテ島』は絵柄と美少女の絵を楽しむ以外のものは微塵もない。村上もとか氏の『フイチン再見!』は、昭和・平成の社会史をひとりの女性の一生を通して描いた力作であり名作。『龍 ron』の蓄積が活きてるのだろう。伊…

大和田秀樹『疾風の勇人』第七巻(講談社)

惜しくも造船疑獄で物語が終わってしまった。パンク風の下村治の登場など、これからむしろ経済ヲタク的には話が盛り上がっていくのに、リフレ的コミックにならずに終結。惜しい。ただしここまでの物語展開はマンガ的要素と現実の時代背景とを巧みかつ面白く…

バスティアン・ヴィヴェス他『ラストマン』1、2巻(飛鳥新社)

お気に入りのBD作家バスティアン・ヴィヴェス の日本マンガの要素を取り入れたという作品。電子書籍で読んだが、なんど3,4巻はないのか。これは困った。 1,2巻はまだ物語の出だしという感じだが、少し冗長。どうも主人公は少年ではなく、その母親のよ…

『モンストレス vol.1: AWAKENING』(G‐NOVELS)

椎名ゆかりさんの訳はどの作品も読みやすく、本作のように入り組んだ作品世界を読むときには特に助けになる。ゴシック・ホラー、スチームパンク、日本的な伝奇小説的雰囲気などいろんな要素が混在化して、グロテスクな世界像を生み出している。ただしヒロイ…

いしいさや『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』(講談社)

Comic NoseとはEconomicsのアナグラムである。Kindle版で日本のマンガを読むようになってしばらくたつが、本作は単行本で購入していろんな人に貸してもよかったかもしれない。 幼少期から思春期まで、エホバの証人の信者である母親に強く影響され、その信者…

倉菌紀彦(ジュール・ヴェルヌ原作)『地底旅行』全四巻

偏屈で狂気じみた熱情をもつ地質・鉱物学者とその甥、そしてアイスランドで雇ったガイドの三人による地球の中心を目指す地底冒険譚である。原作はSFの祖のひとり、ジュール・ヴェルヌの作品。幼少のころに読んだきりの作品だが、それでも地底湖の恐竜たちの…

ビルギット・ヴァイエ『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』(花伝社)

1980年代、モザンビークの社会主義政権は、外貨獲得のために若者たちを当時の「兄弟国」東ドイツに期間労働者として派遣した。この作品は、遠い異邦の生活で青春を送った三人のモザンビークの若者(男二名、女一名)に焦点をあてて、それぞれの人生がどう変…

アニメ『宝石の国』

久しぶりにまとめてテレビのシリーズ化されたアニメをみた。去年は「ソードアートオンライン」をまとめてみたぐらいでめっきり視聴が減ってしまった。夏にジョーン・ロビンソンの研究を福田徳三研究の穴埋めでやろうとしたら思いのほか面倒なことになってし…

能條純一他『昭和天皇物語』第一巻(小学館)そのほか

kindle版で購入。最近は日本のマンガはkindle版か電子書籍で読んでる。しかしこの意表をついた題材とまた能條純一氏という人選。史実と虚構が巧みに重なって、とても面白い作品だ。その他に『空母いぶき』、『大奥』などを読んだ。『大奥』はいよいよ佳境。…

谷口ジロー『いざなうもの』(小学館)

谷口ジロー氏の絶筆を含む、主にフランスでBDで出版された作品を中心にして、それ以外にも小泉八雲についてのすぐれた短編を含む良質のマンガである。 谷口ジロー氏については、「谷口ジローとメビウス」的な趣旨で論説を書くつもりが何年もたってしまった。…

福満しげゆき『終わった漫画家』第一巻

福満しげゆき氏の作品の中で最も笑った。そしてエロさも感じる。これからの展開に目が離せない。 なお福満氏のエッセイには経済を扱ったものが多く、なかなか興味深い論陣を展開している。終わった漫画家(1) (ヤングマガジンコミックス)作者: 福満しげゆ…

『まんがでわかる! ケインズの経済学』(イーストプレス)

経済書ベスト3で何人かの方々があげていて、この本は立ち読みを少ししただけで全部読んでないなと思い、さっそく読破。細かいところを抜かせばよくできていて感心。 マンガ的なケインズでは、ピーター ピュー&クリス ギャラットの定評のある『ケインズ』、…

再録:マスダさん、さようならw−経済学とコミック世界との出会いー(2014年5月19日)のパワポ

twitterともうひとつのブログで、最近の映画『ワンダーウーマン』について小文を書いたのを契機に、懐かしいアメコミの話題になったので、2014年の春に行った上記のトークイベントで作成したパワポをここにフルで掲載。 なおトークイベント自体は、田中秀臣…

ジェフ・ダロウ『少林カウボーイ』

訳者の椎名ゆかりさんから頂戴しました。実にくだらないww。ここまで徹底していると本当に感心しますw。 ある意味、これは日常の無限の反復? ネタの反復を実験的に行った怪作であることは間違いないでしょう。冒頭の文章のみっちり書かれた「いままでの…

ロバート・カークマン『アウトキャスト』1(誠文堂新光社)椎名ゆかり訳

アメリカの郊外に蔓延する悪魔憑きと、それに対峙する「アウトキャスト」(はぐれ者)と神父の二人組。非常に殺伐とした心象風景と格闘を描いています。郊外の殺風景な風景、家族や地域社会の崩壊もこの悪魔憑きとエクソシスト(悪魔祓い)の格闘をよりダー…

大和田秀樹『疾風の勇人』第四巻

元首相でアベノミクス的な政策を重視した池田勇人元首相の半生を、著名政治家や占領軍、さまざまな実名の黒子たちを登場させて多彩に描いていきます。ダイナミックな戦後政治史を漫画の特色を巧みに利用して読ませます。疾風の勇人(4) (モーニング KC)作者: …

『セルジュ・ゲンズブール バンド・デシネで読むその人生と音楽と女たち 』 フランソワ・ダンベルトン

ムダのない洗練されたバンド・デシネ。とても面白い。セルジュ・ゲンズブール バンド・デシネで読むその人生と音楽と女たち作者: フランソワ・ダンベルトン,アレクシ・シャベール,鈴木孝弥出版社/メーカー: DU BOOKS発売日: 2016/11/04メディア: 単行本この…

大和田秀樹『疾風の勇人』第二巻

編集からお送りいただきました。これは面白い。ドッジ、シャープが登場して、まさに戦後経済絵巻物が展開。虚実まぜての展開とマンガらしいデフォルメ感も心地いいw。第三巻も楽しみ。しかしビジュアル化して思ったが、池田勇人、本当にあっという間に登場…

OTOSAMA『西遊筋』第二巻

編集から頂戴しました。ありがとうございます。ツボにはいると面白い!西遊筋(2) (モーニング KC)作者: OTOSAMA出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/07/22メディア: コミックこの商品を含むブログを見る

大和田秀樹『疾風の勇人 所得倍増伝説』

池田勇人を主人公にした政治・経済マンガ、『疾風の勇人 所得倍増伝説』大和田秀樹(講談社)を頂戴しました。歴史的解釈はさておき、これはとても面白いマンガです。続巻が楽しみ。ドッジとのからみはどうなるか? 下村治もはよでてきてほしいw。若き大平…

ブライアン・K・ボーン&フィオナ・ステイブルズ『サーガ3』

1と2でも書いたことだけど、異なる価値観・規範を持つものとの対立と協調、それを疑似家族の成長物語の中で吸収していこうとする野心的な作品。まだ物語の出だしのようでもあり展開がますますよめない。サーガ 3作者: ブライアン・K・ヴォーン,フィオナ・…

かわぐちかいじ『空母いぶき』1巻&2巻

日本の戦後発の空母いぶきを中心にした自衛隊と尖閣諸島をめぐっての中国との軍事衝突がテーマ。非常にタイムリーな話題であり、ついつられて購入してしまった。フィクションとはいえ、「専守防衛」の意味を事象化してみせるとなかなか迫真性がある。かわぐ…

ブライアン・K・ボーン&フィオナ・ステイブルズ『サーガ2』

頂戴しました。ありがとうございます。前作からさらにテーマがはっきりしてきたのは、異なる世界観、異なる種族との争いを調停するものとしての「愛」と「共感」それぞれの可能性でしょう。 「愛」はコミック世界ではよくある展開要素ですが、他者への立場の…

真鍋昌平「アガペー」

『ヤングマガジン』に掲載された真鍋昌平氏の「アガペー」。BELLING少女ハートをモデルにしたアイドルグループ(特にその一人の少女)とそのヲタク三人の心象風景を中心にした物語。 ドルヲタの美学(アイドルとの絶対的距離感の重視など)と「いま」現在を…

アレハンドロ・ホドロフスキー&メビウス『アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険』

現代の新約聖書前日冒険譚みたいな話。分裂症の大学教授を狂言回しに、現代の神話を構築していく。とはいえ全体的に軽い仕上がりで読みやすい。アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険作者: アレハンドロ・ホドロフスキー,メビウス,原正人出版社/メーカー: パイ…

ブライアン・K・ボーン&フィオナ・ステイブルズ『サーガ1』

頂戴しました、ありがとうございます。アイズナー賞などを連続して受賞した話題のコミックの登場です。翻訳は椎名ゆかりさん。『ロミオとジュリエット』が死なないで子供まで作って大脱走、という感じでしょうか。主人公のふたりは対立する星人、その生まれ…

沙村広明『春風のスネグラチカ』

ここ数年読んだマンガのなかで最も悲惨な作品『ブラッドハーレの馬車』を一瞬想起させる歴史ロマンです。今年読んだマンガのなかで最もドキドキかつ、自分のなかの嗜虐趣味とご対面するかのごとき「発見」も重なり、とてもいい作品です。春風のスネグラチカ …

松本大洋+ニコラ・ド・クレシー(玄光社MooK)

頂戴しました。ありがとうございます。巨匠ふたりのイラスト集。すばらしい作品が多く眺めてるだけで時間がみるみる経過。シンポジウム、往復書簡も研究には貴重な資料。しかし贅沢な一冊。松本大洋+ニコラ・ド・クレシー (玄光社MOOK)作者: 松本大洋,ニコラ…